建物の瑕疵を調査したり、設計図面をチェックして思うこと
東京防水はお陰様で創業8年目に入りました。
まだまだ若い建設会社ではありますが、実はベテラン社員の多い会社です。
かく言う私は設計業務を中心に建設業界で働くこと40年超、
未だ現役で建物修繕のお役に立てていることに喜びを感じています。
不動産会社でマンション、ビル、ホテル、戸建て住宅などの設計を15年以上、
その後の医薬品メーカーでは20年以上にわたり、製薬工場、研究所、事務所建物、ドラッグストアなどの設計、
既存建物の改修工事等々多くの建築工事に携わってきました。
20代の頃は現場を通していろんなことを教わりました。
職長さんや専門職人さんの中には、
建築の難しさや細部の納まりを十二分に心得た知識豊富な方もいらっしゃり、
それを表に出さず寡黙にさり気なくやり遂げる男気と言いますか、
職人の誇りのようなものを感じたものです。
翻って現代は、建築図面内容を正確に読み取るができなくても、
工場加工された部品をプラモデルを組み立てるかのごとく、
組み合わせるだけで出来上がってしまう建物もあります。
細部の納まりを知らないあるいは違和感を感じない現場監督、
職人の手配や材料の調達が仕事だと思っている現場監督、
図面を見ても材料の寸法出し・加工ができない職人など、
建築の知識や技術が無くても、
建築現場で勤まってしまう時代になったのだと実感しています。
先日も、ある建物を調査してその思いを強くしました。
施工会社が雨漏りの修繕を幾度行っても一向に雨漏りが収まらず、
またオーナーさんが設計事務所に雨漏りの原因を尋ねても、
明確な返答が返ってこないと嘆いている新築同然の建物でした。
現地調査の前に竣工図一式をメールで貰い、
平面図、立面図、断面図、矩計図と見て(読んで)いくうちに、
納まりに疑問のある箇所が見えてきました。
雨漏り原因を推測し、構造図でその推測は正しいと検証できました。
この設計は本当に一級級建築士が描いたのだろうか、
いや建築を知らないCADオペレーターが描いたに違いないなどと思いながら、
設計に対する一級建築士としての責任感や、
一級建築士としての誇りを感じさせない図面に残念さを感じたのでした。
施工した建設会社も建設会社で、
図面通りに工事をすることに違和感はなかったのだろうか。
現場監督さんは設計者に意見を言ったり、
設計変更を提案しなかったのだろうかなどと、
建設会社の対応にも不誠実さを感じた建物でした。
図面に書き入れる線や文字は、
適切な図面上の適切な位置に適切な方法で書きいれてはじめて、
図面を見る(読む)人に有効な情報として伝わります。
適切でない図面の中に書かれた必要のない線や文字は、
見る(読む)のに邪魔になります。
何でも書き入れておけばいいやというものではありません。
理解しやすく読みやすいように工夫され配慮されて描かれた図面こそが、
良い設計であり一級建築士の矜持だと思っています。
人の振り見て我が振り直せです。
私も一級建築士として、その名に恥じない仕事をしなければ!
と気を引き締めさせられた案件でした。