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東京防水の一級建築士コラム:木造の大型公共施設や中高層建物が増えているのはなぜ?

コラム

「最近、木造の学校や10階建てを超えるホテル、マンションの建築が増えてきたってテレビ番組で紹介していたけど、大きな木造建物が建てられるようになったのはどうしてなの?」と、妻がその理由を知りたがりました。木造の大型建物、中高層建物の建設が増えてきた理由をお話ししたいと思います。普段聞き慣れない単語が出てきたり、専門的で少し難解なところがあるかも知れませんが、ざっくりと感覚的な概念としてお楽しみくださると有難く思います。

1.国の施策が、木材利用に変わったことが一番の理由です。

1985年頃の日米貿易摩擦を契機として、エンジニアリングウッド、構造方法と構造設計の合理化、集成材建築物、中規模木造、ドーム建築などの技術研究、開発を経て、地球温暖化対策、二酸化炭素排出削減、SDGsなどの機運が高まり、建築への木材利用が求められるようになったことが大きな背景にあります。

2010年 「公共建築物等における木材利用の促進に関する法律」公布施行
2016年 CLT(直交集成板)による建築物の設計法に関する国土交通省告示の公布施行
2019年 木造の防耐火要件を緩和する処置の施行

これら法改正・整備をはじめとし、木造建築物を後押しする研究開発、設計法の整備、補助金交付など国の施策が講じられたことで、木造の公共建築物、大型建築物の建設が増えてきました。

2016年 国土交通省 CLTに関するプレスリリース

2.CLT(直交集成板)とは・・

CLTとはCross Laminated Timberの略でJASでは直交集成板と言います。
ひき板(ラミナ)を並べた後、繊維方向が直交するように積層接着した木質系材料です。
CLTは1995年あたりからオーストリアを中心に発展し、ヨーロッパ各国でも様々な建物に利用されています。

5層のCLT

3.CLTで何が変わったの?

(1)鉄筋コンクリート並みの構造耐力が可能になりました

2007年頃ヨーロッパから我が国に導入されたCLTは、最初は内装材としての活用でした。その後、接合法、防耐火技術、構法や設計方法の研究開発がなされ、RCやS造とのハイブリッド構造化が急速に進みました。

そしてCLTパネル壁式構造の構造方法と構造計算に関する技術基準が、2016年国土交通省告示611号と612号で規定され、構造設計業務が格段に簡便化されたことでCLTを利用した建物の建設に拍車がかかりました。
木造建物を設計する際、木造の壁の荷重を支える強さを壁倍率という指標を用いて構造安全性の検証を行います。通常の木造戸建て住宅の場合、2~5倍の壁倍率が一般的なのですが、CLTパネルの壁倍率は最大30倍を可能としています。これまではコンクリートや鉄骨でしか支えることが出来なかった荷重を、CLTに負担させることが出来るようになったのです。

木造耐力壁の壁倍率

(2)5階建て以上14階建て以下の建物に必要な2時間耐火構造が可能になりました

CLT材が構造材として活用されるには、火災時であっても燃えることなく建物をしっかりと支える構造材でなければなりません。様々な研究開発を経て、いまではCLT木材の耐火時間は2時間が可能となっています。

2時間耐火は、高さ14階建てまでの建物や大型の公共建造物に要求される耐火時間になります。


2時間耐火CLTは、2016年の国土交通省告示後、国土交通大臣の耐火構造の認定を受けた製品が多くの企業や団体により研究開発され、製品化が進んできました。

4.CLT建築物のメリット

CLTを用いた建物の建設は、国からの補助金交付などもあり、木材学会、CLT協会をはじめとした団体をはじめ、ゼネコンなども普及拡大に努めています。CLT建物にすることで得られるメリットを考えてみたいと思います。

(1)重量が軽くなります

CLT材の単位体積あたりの重さはコンクリートの約1/5です。
建物の総重量が軽くなるため、RC造(鉄筋コンクリート造)では基礎杭が必要であった地盤でも、地盤の改良を行うだけで建物の重量を支えることが出来るようになったことで、基礎杭の費用が削減でき、工期を大きく短縮することができた14階建てマンションの事例があります。

(2)断熱性、遮炎性、遮熱性、遮音性が高くなります

(3)プレファブ化により工期を短縮することが可能です

工場生産品を現場で組み立てる乾式工法が可能なため、養生期間を必要としないので工期を短縮することができます。14階建てマンションの建設では3ヶ月の工期短縮ができました。

(4)完成建物の精度・品質にバラツキが生じません

CLTは工場生産品のため品質が一定である上、特別な技術も不要な為、熟練工が必要なく職人や技術者による品質のバラツキが生じにくい構法です。

(5)CO2の排出量を抑えることができます

木材学会は、三重県の学校建築物(木造2階建て延べ床面積407.2㎡)において実験を行った二酸化炭素排出に関する論文を公表しています。それによると建設時プラス50年間使用した場合のCLT造の二酸化炭素総排出量は、RC造(鉄筋コンクリート)より30.6%、S造(鉄骨)より18.5%、削減できるとしています。
(二酸化炭素総排出量:CLT造=168t、RC造=242t、S造=206t)

木材学会 研究論文発表資料

4.今後の展望

現在のところ建設に掛かる総工事費は、CLT建築物の方がRC造よりも高くなる傾向にあるようです。しかし、技術革新がさらに進むことで低コスト化が期待でき、持続可能社会、SDGs、二酸化炭素排出削減に貢献するCLT建造物は、設計から施工に至るまで多くのメリットを有しているので今後益々増えていくのだろうと思います。

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