屋上防水の改修に適している防水種類・工法は? 耐用年数と工事費の目安もわかりやすく纏めてみました
劣化した屋上防水を改修・修繕する場合の防水種類・工法のことや、
耐用年数、概算工事費用に関するご質問を多くの方からお受けいたします。
ご参考となるよう基本的なことをわかりやすく簡潔にまとめてみました。
ただし、建物構造、立地、使用状況などにより個別差があり特に次の点に関しましては、
工事費用に大きく影響を与える要因となりますこと、どうぞご承知をお願いいたします。
・現在の防水種類・工法
・下地処理の重軽度
・施工する場所の施工難易度
・建物内の資材運搬等の難易度
防水改修工事の種類・工法
1.アスファルト防水 歩行不可
アスファルト防水は260℃の溶融アスファルトを使用して防水層を形成するのが一般的です。
一方、既存防水を改修する工法はアスファルトに合成ゴムやプラスチックなどを添加した
アスファルトシートを使用する以下2通りの工法が代表的なものとなります。
どちらの工法も厚みは8mm前後、重さ8~9kg/m2が標準です。
(1)トーチ工法
改質アスファルトシートをトーチと呼ぶガスバーナーを使用して、
アスファルトを炙り溶かしながら接着していく工法です。
1)長所
(a)トーチ工法は溶融アスファルトを使用しないため煙や臭いの発生は少ない工法です。
(b)シート相互は熱溶着できるので水密性の高い防水層を形成することができます。
2)短所
(a)単層防水ではシート相互の接合部や端末処理部に高い施工精度が必要となります。
(b)ジョイント接合部の処理が不適切だと漏水事故につながります。
(2)常温粘着工法
工場製造時に改質アスファルトシート裏面に施した接着剤の表面フィルムを剥がしながら、
改質アスファルトシートを張り拡げていく工法です。
1)長所
(a)火気をほとんど使用しない常温工法です。
(b)ドレン周り等の重要な部位はハンドバーナーで溶融一体化することで熱工法と同様の水密性が得られます。
2)短所
(a)単層防水ではシート相互の接合部や端末処理部に高い施工精度が必要です。
(b)またハンドバーナーの使用に熟練度が必要となります。
(c)ジョイント接合部の処理がまずいと漏水事故につながります。
2.塩ビシート防水 軽歩行OK
塩化ビニル製シートを張り拡げていく工法です。
・接着剤で固定する接着工法
・固定用ディスクを使う機械的固定工法
の2通りがあります。
(1)接着工法
厚さ2~3mm 重さ2~3kg/m2
1)長所
(a)防水種類・工法のなかで最も施工スピードが速い工法です。
(b)シートの重なり部分は溶着するため水密性が比較的高くなります。
2)短所
(a)シート基材の耐久性は高いのですが接着剤が湿気、水分に弱いため、
防水裏面に水が廻ると加水分解しシートの重なり部分から剥がれが生じます。
(2)機械的固定工法
厚さ2~3mm 重さ2~3kg/m2
1)長所
(a)常温施工が可能であり単層防水の為施工スピードが速い工法です。
(b)溶着が出来るため接合部の水密性が他のシート防水と比較して高くなります。
2)短所
(a)下地との接合がビスのみであるため双方の強度確認が必要となります。
(b)ビス廻りで結露が起こるとディスク及びビス廻りで発錆し劣化が進むと防水層が飛散することがあります。
(c)次回の改修時に適用できる工法のバリエーションが少なくなります。
(d)施工中に音や振動の発生があります。
3.ウレタン防水 軽歩行OK
ウレタン防水材を塗り拡げて防水層を形成する塗膜防水です。
代表的な工法としては、
・既存防水層やコンクリート床の水分の影響を軽減する通気緩衝工法
・既存防水層にウレタン防水材を塗り広げる密着工法
の2種類があります。
(1)通気緩衝工法
厚さ4mm前後 重さ4~5kg/mm2
1)長所
(a)1層目の絶縁層が水蒸気による膨れを抑制させます。
(b)低溶剤型で環境対応型ウレタン塗膜複合防水です。
(c)塗膜材であるため下地形状を問わず柔軟に防水層を形成することができます。
(d)シート防水で施工が困難な場所で多用される主要工法です。
2)短所
(a)現場で材料を計量・混合攪拌・塗布・乾燥させて防水層を形成するため、
作業員の力量による品質バラつきが発生する懸念があります。
(2)密着工法
厚さ3mm前後 重さ4kg/m2前後
1)長所
(a)低溶剤型で環境対応型ウレタン塗膜複合防水です。
(b)塗膜材であるため下地形状を問わず柔軟に防水層を形成することができます。
(c)シート防水で施工が困難な場合に多用される工法です。
2)短所
(a)現場で材料を計量・混合攪拌・塗布・乾燥させて防水層を形成するため、
作業員の力量による品質バラつきが発生する懸念があります。
防水種類が違っても耐用年数は同じです
各種防水材メーカーなどが組織する団体の耐用年数に関するコメントを読み解くと、
材料種類に起因する影響よりも、自然環境、使用状況、メンテナンス頻度による影響の方が大きいとしています。
シート防水材メーカーの任意団体である合成高分子ルーフィング工業会は、
国土交通省監修のもとで行ったワーキンググループの中で耐用年数の見直しを行った結果、
・アスファルト防水
・シート防水
・ウレタン防水
の3種類に関し露出施工した防水に関し耐用年数に差異は無く全て15年と結論しています。
合成高分子ルーフィング工業会
https://www.krkroof.net/technical/002-1.html
防水種類・工法の違いによる工事費用の目安
屋上防水の改修工事費は防水種類・工法により多少違ってきます。
上で紹介した種類・工法の一般的な目安となる工事費をご紹介します。
普通の屋上の改修工事で下地処理などを要しない程度の劣化を想定しています。
メーカーや商品規格(グレード)により幅がありますが、
おおよその工事金額を把握する資料としてご活用ください。単位:円/㎡
1.アスファルト防水
(1)トーチ工法:6,000~8,500
(2)常温工法:8,500~10,000
2.塩ビシート防水
(1)接着工法:4,500~6,000
(2)機械的固定工法:5,500~8,500
3.ウレタン防水
(1)密着工法:4,500~6,000
(2)通気緩衝工法:6,000~8,500
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コラム執筆者:一級建築士 佐藤静