屋上防水の改修工事を行うとき、断熱性を向上させる工事も同時に行うことは可能ですか?
1980年代に建てれれた鉄筋コンクリート3階建て共同住宅のオーナー様からのご依頼でした。
「夏の日射で屋上が熱せられ、その熱で3階室内の冷房の効きが悪く快適な室温になりません。
断熱性能を高めることで改善されると思うのですが、断熱性の高い防水工事を行うことは可能ですか?」
という屋上防水改修の工事見積のご依頼を受けました。
A:3階の室内温度を快適にする方法はあります。
屋上面の温度を上げさせない遮熱と屋上の熱を伝えさせない断熱があります。
熱の伝わり方は次の3通りです。
1.伝導
2.対流
3.放射(輻射)
屋上直下の室内温度が上昇する原因の一つは、
屋上防水面が太陽光で熱せられ、その高い温度が階下に伝導することです。
屋上防水面の熱が上昇しないあるいは熱が階下に伝わり難い対策を行う方法は次の2通りがあります。
1.屋上防水面の温度を上昇させない=太陽光の熱を反射させる=遮熱
2.屋上防水面の高い温度を階下に伝導させない=断熱
1.遮熱トップコートの使用で太陽光を反射
一般的なウレタン防水通気緩衝工法で施工し遮熱トップコートを使って仕上げると、
通常のトップコートを使ったときよりも屋上直下の天井で10~15℃程度温度が下がり、
室温は2~3℃程度下がったというデータがあります。
室温に関しては、天井高さやサッシ窓などからの温熱影響もありますので、
それぞれの建物・室によるバラツキが生じることはご理解ください。
遮熱トップコートは太陽光を反射させることで、
屋上面の温度上昇を軽減させる効果があります。
遮熱トップコートの反射率は50~60%が一般的です。
これに太陽光入射角による反射率30%を合わせ約80~90%の反射を見込みます。
特に屋上面の温度を上昇させる太陽エネルギーは赤外線であり、太陽エネルギーの約50%を占めています。
この赤外線を効率よく反射させることが屋上面の温度上昇を抑えることになり、
室温上昇を抑えることに繋がるのが遮熱トップコートの作用です。
2.断熱材を敷設して熱伝導を軽減(外断熱)
ポリエチレンフォームあるいは硬質ウレタンフォームを敷設して外断熱する方法があります。
外断熱工法は屋上の上(外側)に断熱材を施工する工法です。
外断熱材の上にウレタン防水あるいはシート防水を施工すれば防水上も問題ありません。
3.遮熱と断熱の両方も可能ですが、費用対効果は?
もちろん遮熱と断熱の両方を実施することは可能ですが、
コストに見合うだけの効果が期待できるかは疑問があります。
どちらか一つで充分だと考えます。
4.ドレン廻りの納まりや突起物などの高さ納まりに注意が必要
既存の屋上防水を改修するときは突起物や出入口など、
様々な箇所で高さ調整や取合い調整が必要となります。
わずかな隙間が出来ても雨漏りの原因になりますので繊細な施工が必要です。
5.建築基準法が認める断熱材の厚さ
耐火構造の屋根・屋上の断熱材の厚さは、
建築基準法法では50mm以下と定められています。
6.断熱性能の比較ができる指標=熱伝導率(W/mk)
断熱性能が高いあるいは低いと判断する指標として熱伝導率があります。
熱伝導率は熱の伝わる難易を表しそれぞれの物質が持つ固有の値です。
物質の両側の温度差が1℃の状態のとき1mの物質厚さを伝導するエネルギー量が熱伝導率です。
熱伝導率が大きいと熱が伝わりやすく(熱を奪われやすく)、
熱伝導率が小さいと熱が伝わり難くく断熱性が高いということになります。
参考:建築材料として使われることの多い物質の熱伝導率 λ(W/mk)例
・銅:370
・アルミ:200
・鉄:53
・コンクリート:1.6
・石膏ボード:0.22
・木:0.12
・ポリエチレンフォーム:0.038
・硬質ウレタンフォーム:0.026
・空気:0.02(真空を除き最も熱伝導の悪い物質=最も断熱性の高い物質)
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コラム執筆者:一級建築士 佐藤静