マンション大規模修繕工事の外壁塗装に使う塗料はどういった種類のものが良いのでしょうか?
マンションの大規模修繕工事を計画されているオーナー様からのご質問でした。
「見積書に書いてある塗装の仕様が各社ばらばらで、それぞれの塗料の違いやどれを選んだら良いか全くわかりません。
一級建築士さんなら詳しく説明して貰えるかと思って質問してみました。」とのことでした。
外壁塗装の目的
外壁を塗装する目的は次の3つです。
(1)外壁の保護
(2)外壁の美観を保つ
(3)外壁に性能・機能を付加する
塗料の4成分
塗料は次の4つの成分から成り立っています。
(1)樹脂:塗料の性質を決める物質
(2)顔料:色を決める物質
(3)溶剤:顔料や添加剤を溶かして液状にする
(4)添加剤:塗料の性能を向上させる物質
これらの4成分の配合割合の違いによて塗料の性質性能が決まります。
配合比率を変えることで様々な性質性能の塗料を作ることが可能です。
塗料の種類
塗料の種類分けは着目する項目により分類が変わります。
着目点を織り交ぜて分類しているブログなどを見かけることがありますが、
着目点をわかりやすく整理し以下のように分類してみました。
大規模修繕の計画を進めていくうえでの参考にしてみてください。
1.建設用塗料
使用する用途別に塗料を次のように区分することができます。
建設用塗料(建物、構築物、建設資材)は年間450~500万トン程度使用され、
塗料全体の35~40%を占めています。
(1)建築物や構築物用の建設用塗料
(2)船舶、航空機、自動車などの輸送機械用塗料
(3)電気機械用塗料
(4)家具用塗料
(5)皮革製品、模型、手芸用塗料
(6)その他
2.樹脂成分による種類分け
(1)アクリル塗料
アクリル塗料は手軽に扱えるので、多くのメーカーから多彩な商品が出ています。
他の塗料と比べて安価ですが、耐久性が低く、ツヤ落ちも早い性質があります。
屋内の塗装、塗り替え周期の早い屋外で使用する塗料として適しています。
短期間で解体する予定の仮設建物、
コストを抑えたい新築建売住宅などで使用されることもあります。
(2)ウレタン塗料
アクリル塗料よりも耐候性・耐久性の高い塗料です。
軟らかくて密着性が強く、木部や雨どいなど細かい部分の塗装に使われます。
アクリル塗料などの塗膜の上から下地作りなしで直接塗装することが可能で、
使いやすい扱いやすい塗料ですので塗装職人に好まれる塗料です。
ただし、気温や湿度の影響を受けやすい性質もありますので注意が必要です。
(3)シリコン塗料
現在外壁や屋根の塗装にもっとも使われている塗料です。
紫外線に強く耐候性が高いにも拘らず価格はウレタン塗料と変わりません。
塗装後の仕上がりも美しくコストパフォーマンスが高い塗料です。
(4)フッ素塗料
高耐久塗料で、15~20年の耐久性があります。
親水性の高い塗料ですので汚れにくく、
光沢が長持ちする上、防カビと防藻性の高い塗料です。
(5)無機塗料
セラミックやケイ素などの無機物が混合された高耐候の塗料です。
耐久性20年以上が一般的ですが、耐久性30年を明記している無機塗料もあります。
低汚染性、防カビ性、防藻性があり、燃えづらい性質を持っています。
3.溶剤による種類分け
希釈剤に水を使っているか、有機溶剤を使っているかで、水性と油性に分かれます。
(1)水性
水性塗料は臭いが少なく、環境にやさしいことが特長です。
水性塗料はハケで塗ったときに塗り跡が残ってしまうことがあります。
(2)弱溶性
塗料用シンナーを使う塗料です。
水性よりも耐久性があり、発色性が良いのが特徴です。
溶剤系塗料は乾燥すると塗り跡が目立たなくなり平滑な塗膜を作ります。
(3)強溶性
強力シンナーを使う塗料です。
耐候性や耐久性が求められる橋梁や鉄塔など屋外の大型構造物で使用されます。
4.硬化剤混合方法の違いによる1液型と2液型
(1) 1液型
塗料パッケージが一つで、主剤と硬化剤が予め混合されている塗料を指します。
塗料缶を開封するだけで、すぐに使うことができ、
計量や混合の手間を必要としない作業性の高い塗料です。
(2) 2液型
主剤と硬化剤の2つに分かれていて、塗装する直前にこの2つを混ぜ合わせて使います。
硬化剤を混合するため乾燥後は強固な塗膜を作ることが可能です。
一方、数時間ほどで塗料が固まるため作り置きや保存ができません。
混合した塗料は当日中に使い切る必要があります。
5.添加剤による性能・機能の向上・付加
塗料の性能・機能を向上させるあるいは付加させる化学物資を添加剤と言います。
以下のものが代表的な添加剤です。
・可塑剤
・分散剤
・沈降防止剤
・乳化剤
・増粘剤
・消泡剤
・防藻剤
・防カビ剤
・防腐剤
・皮張り防止剤
・乾燥剤
・たれ防止剤
・つや消し剤
どの添加剤を選択し、どう組み合わせ、それぞれどの程度の量を混合するかは、
塗料性能を決定する重要な要素ですので企業秘密となっています。
添加剤を混合すると塗料の中に含まれる樹脂や顔料の量が少なくなります。
追加した添加剤によって塗料の性能が向上しても、
樹脂や顔料が少なくなることで塗料本来の性質が損なわれることがあります。
つや消し剤、防カビ剤、防藻剤などの添加は慎重に考える必要があります。
6.マンション外壁に多く使用される塗料は・・
ウレタン塗料あるいはシリコン塗料は、
価格が手頃で耐久性が高いため多くのマンションで使われる塗料です。
マンションの外壁に使用する塗料は、
臭いの無い水性塗料を使用することが一般液です。
耐久性の高い弱溶性塗料を使う業者・職人もいますが、
臭いの影響の無い水性塗料の使用が適しています。
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