大規模修繕工事 押出成形セメント板とALC板との違いって何ですか?
7階建ての中規模オフィスビルで、
大規模修繕工事の見積の依頼がありました。
現地調査時、
ご依頼者から外壁に関する次のような質問を受けました。
「外壁の押出成形セメント板は、見た目はALCとほぼ変わらないのに、
価格はALC板より高かったことを覚えています。
ALC板との違いが良くわかっていないのですが、
もしご存じでしたら教えて貰えませんか?」
押出成形セメント板とは
押出成形セメント板 (Extruded Cement Panelの頭文字で略称ECP)は、
主として中高層の鉄骨造建築物の外壁あるいは間仕切壁に使用します。
セメント、けい酸質原料および繊維質原料を主原料としています。
コンクリートブロックのような空洞を持たせて板状に押出成形し、
オートクレーブ養生(高温高圧蒸気養生)した外壁向けの建材です。
製造の歴史と規格
押出成形セメント板の歴史はそれほど古くはありません。
1970年代に開発され2社が製造をはじめました。
1990年代後半に需要が増えはじめ、仕様と規格の統一の必要が生じて、
1996年に協会が設立され1997年に建築工事共通仕様書に収載されました。
日本工業規格には2003年、JIS A 5441:2003として規定されて、
2023年にはJIS A5441: 2023に改正されています。
特徴
後述するALC板との違いの項で詳しくご説明しますが、
ECP板の代表的な特徴は次の通りです。
(1)力学的性能、耐久性、耐火性、耐震性に優れています
(2)タイル、塗装、素地など自由に仕上げを選ぶことができます
(3)乾式工法のため施工性に優れています
(4)工場プレカットにより現場内での廃材の発生を軽減します
標準の外壁張り工法
外壁に使用する場合は、
Zクリップと呼ぶ取り付け金物を用いて張っていきます。
この工法は建物の変位追従性に優れた完全乾式工法で、
縦張工法と横張工法の両方があります。
ALC板とは
ALCとは「Autoclaved Lightweight aerated Concrete」の頭文字です。
高温高圧蒸気養生された(Autoclaved)軽量気泡(Lightweight aerated)
コンクリート(Concrete)の略です。
「軽くて強いコンクリート」ということになります。
特徴
ALCの特徴は軽量で断熱性が高いことです。
内部に多くの気泡を含んでいるため、
普通のコンクリートに比べて軽量で、
その気泡が熱を遮るため断熱性に優れています。
しかし、水分を吸収しやすく、
耐水性の塗料などによる保護が必要、
というデメリットもあります。
ECP板とALC板の違い
最大の違いは素材感
・コンクリートのような肌合い
・美しい平滑性
・シャープ感
・高級感
があり、壁面全体の整然とした高品質感は他の外壁材では表現できません。
ECPは、
・素地そのままでの採用が可能
・工場塗装パネル
・工場タイル張りパネル
・多様なデザインパネル
などが可能で、サッシ、ガラスとともに構成する外壁は、
機能美あふれる魅力的な建物の表情を演出することができます。
もう一つは総合的な安心感
外壁材に求める主な性能は次の通りで、
ECPはこれら物理的性能に優れた建材です。
ECP ALC
・耐震性 ◎ 〇
・耐風性 ◎ 〇
・耐火性 ◎ ◎
・断熱性 〇 ◎
・水密性 ◎ △
・気密性 △ △
・遮音性 ◎ 〇
・耐候性 ◎ 〇
ECPは素材自体に防水性があり、表面処理をせずに使用できるため、
素地そのものでコンクリートのような肌合いを鉄骨造で表現できます。
押出成形セメント板協会
押出成形セメント板の詳しい情報は、
押出成形セメント板協会のホームページをご覧ください。
http://www.ecp-kyoukai.jp/index.html