雨漏り調査に、建物図面があると良い理由は?
建物図面があると雨漏りの原因箇所を
見逃すリスクが減ります
建物を所有している方は、
建築基準法に適合した設計図面または竣工図面をお持ちだと思います。
設計図面は建築基準法に適合した建物かどうかを
確認するための書類「建築確認」に必ず添付されています。
建築確認は正本・副本の2部でもって申請し、
建築基準法に適合していると確認できたとき、
副本1部は確認済証と一緒に返却されます。
建築士をはじめとした技術者は、建物の図面を読むことで
建物の構造、使用材料、建物の組立方法、各所の納まりを知ることが出来ます。
建物の組立方法、各所の納まりを知ることは、
雨漏りなどの不具合の発生原因を見つけたり推測する手がかりになり、
特に目で直接確認できない隠れた場所の雨漏りの原因を推定するのに
大きな助けとなります。
前回のブログ「止水工事ハイドログラウト」で書きました
地下漏水の根本原因は、
矩計図と排水設備図面が有ったればこそ推測できたものです。
その上、根本原因の解決には大掛かりな工事が必要であることを
所有者に説明する際にもこれらの図面は大いに役立ちました。
雨漏りだと思っていたのに、
根本原因は違う所にあった・・・
1階は学習塾、2階3階は賃貸マンションというビルで、
夜間に雨が強く降った翌朝に限って1階学習塾の床が濡れ、
天井に水痕が残っているという不可思議な現象が起こるビルがありました。
設備図を読みながら現地調査を行い、可能性がある、
あらゆる原因を消去法で検討した結果、
目に見えない原因を特定することができたのでした。
これまでたくさんの業者さんに見てもらったにも拘らず
一向に改善しなかった現象の原因究明が出来たのも、
設備図面があったお陰です。
私たち建築士にとって建物図面は、
人間のレントゲン写真や各種検査結果のデータのようなものです。
修理やリニューアル、リノベーションのときに大いに重宝するツールです。
図面の種類やその役割を以下で簡単にご説明いたします。
意匠図
建築設計図面は大きな括りで意匠図、構造図、設備図の3つに分類されます。
意匠図は、その建物がどんな敷地にどんな形で
どんな構造でどんな材料を使って建築され、
各階の平面的な間取や立体的な構成は
どうなっているかが描いてある図面です。
建築士は設計しているとき、
立体的な空間を思い描きながら
平面に置き換えて図面を描いています。
例えば上下階で階段の位置がずれていたり、
設備配管の位置がずれていると建物として成立しなくなるので、
それらの位置や構成の整合性を取りながら平面図を描いています。
建物の外観のデザインを描いた図面は立面図と言います。
内装のデザインを描き表したものは展開図と呼び、
これらも意匠図の一部になります。
戸建て住宅の場合は展開図を描かない場合がありますが、
室内のデザインや天井高さ、電気コンセント・スイッチなどの
位置・高さ関係を確認するのに重宝する図面です。
構造図
構造図はその名の通り建物の構造を指示した図面です。
構造部材の平面配置、立体配置、断面形状、部材構成などを描きます。
建築士の設計である場合は一定規模以下の木造建物などは
建築基準法6条の4の規定で構造の一部の法的適合性審査を
省略できるとしています。
しかしこの規定は法的適合性の公的審査を省略できるとしただけであり、
建築士は自らの責任において法的適合性を確保した設計を行う義務
があることには何ら変わりがありません。
木造建物の構造図面として一般的なものは
基礎伏図、各階床伏図、軸組図、小屋伏図、小屋組図があります。
すべての図面が揃っている場合は信頼できる建築士の設計と言え、
多くの場合はこれらの図面の一部がありません。
信頼できる建築士の設計か否かは
先の意匠図で紹介した展開図とともに、
こういった図面の有無で判断することもできます。
リフォームやリニューアルを検討する際、
間仕切壁や柱を取りたいが可能なのだろうかという
悩みは生活様式の変化とともに増えてきます。
このような改修工事をお望みの場合は、
構造図があると天井内、床下、壁内を調査するために
天井や壁を壊す必要が無くなるので、
費用が掛からず判断・結論が早くなります。
設備図
設備図は、電気設備、弱電設備 給排水設備、衛生設備、空調換気設備の
5分類になります。
断面的関係性、平面的関係性を明確にするため、
必要とする図面数は建物の規模などにより異なってきます。
戸建住宅など小規模の建物は、
電気・弱電(電話、テレビ)の電気系と、
給水給湯・排水・衛生器具・ガスの配管系、
空調換気のダクト系に分けた3枚の図面にすることが一般的です。
技術者・職人は各種設備の関係性が一目で理解することが出来て
施工ミスを防ぐことにも繋がります。