ウレタン防水の機械的固定工法とシート防水の機械的固定工法は何が違うのですか?
ウレタン防水の機械的固定工法をご紹介したブログを読んだ方から、上のようなご質問を頂きました。
防水層を作る原理は同じで、工事手順も途中までは一緒です
シートには風により浮き上がる力が作用します
風は吹き抜ける際に負圧が生じ、物を浮かあがらせる力を働かせます。
屋上に張ったシート防水やウレタン防水の下地シートにも
浮き上がりの力が作用します。
シートが剥がれないようにするには、
コンクリート下地に固着させる必要があります。
固着させる方法は
①接着剤を使った接着工法
②固定金具を使った機械的固定工法
の2種類になります。
機械的固定工法の特徴
機械的固定工法はシートをコンクリート下地に固着させる方法として、
専用の金属板や固定金物を使用します。
接着剤を用いて固着する方法に対する名称なのですが、
何だか少し仰々しく感じてしまいます。
接着工法との違いも見ながらご説明します。
1.現在の防水層とは縁を切るので、
現在の防水層の不具合補修や下地作成は、
原則必要ありません
接着工法の場合は、現在の防水層に密着接着させて
新旧防水層一体化により風の浮き上がり力に抵抗します。
が、機械的固定工法は固定金具を使用して
コンクリート躯体にシートを固定することで
風の浮き上がり力に抵抗します。
だから現在の防水層を整備する必要が無くなります。
ただし、新しい防水層に及ぼす影響が著しいことが予想される
不具合や劣化は取り除くか補修する必要があります。
2.水蒸気を脱気筒から蒸散させるための
通気層があります
現在の防水層と縁を切りますので通気層が自然に形成されます。
通気層を設ける通気シート(絶縁シート)を敷設したり
防水シート自体に通気層が組み込まれているものなど
メーカーにより仕様が違いますが、いずれにしても通気層は確保されます。
シート防水のメーカーの中には絶縁シートを敷設する機械的固定工法のことを
絶縁工法という名称を使うところがあります。
3.現在の防水層の化学成分の影響を軽減できます
現在の防水層と新しい防水層の化学成分が混ざると好ましくない
化学反応を引き起こす新旧防水の組み合わせがあります。
機械的固定工法の場合は現在の防水層とは縁を切りますので
新旧防水層の化学成分の接触がなくなります。
好ましくない化学反応を引き起こすことは無くなります。
4.少量の雨であれば工事が可能です
水溜まりが出来ない程度の雨や、
新しい防水層の通気層を通して蒸散できるくらいの量の雨であれば、
工事をすることは可能です。
ただしウレタン塗膜防水機械的固定工法の場合は
ウレタン塗りの作業は出来ません。
5.工事中、音と振動が発生します
固定金具をコンクリート躯体に設置するときにドリルで穴をあけたり、
ビスを打ち込みますので、音や振動が発生します。
コンクリートは音や振動を増幅して伝播させることがありますので、
予想していたものよりも大きかったと感じる方もいらっしゃいます。
6.ウレタン防水機械的固定工法は
敷設したシートの上にウレタンを塗ります
シート防水の場合はシートを張って終わりですが、
ウレタン防水の場合はシートの上にウレタンを通常3層塗り重ねて、
シームレスな防水層を作ります。
シート防水の場合、シートジョイント(シートの重ね部)や
平場と立上り部の接点、設備用塔屋の取合いなどの入隅が弱点となり、
シートの剥がれやよじれが生じ易いところです。
その点、ウレタン防水はシートの上にウレタン塗膜を形成する工法ですので
安心な防水膜を形成できます。