分譲マンションの修繕積立金とは・・・
国土交通省は今年の9月に「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」を改訂しました。初版は2011年4月で、「新築マンションの購入予定者に対し、修繕積立金に関する基本的な知識や、修繕積立金の額の目安を示し、分譲事業者から提示された修繕積立金の額の水準等についての判断材料を提供するために、作成したものです。」と、作成の趣旨を述べています。
今回の改訂に関しては、「新築マンションの購入予定者に加え、既存のマンションの区分所有者や購入予定者においても、修繕積立金に関する基本的な知識や修繕積立金の額の目安について参照することができるガイドラインとして改訂することとしました。本ガイドラインが活用されることによって、購入予定者・区分所有者・管理組合の修繕積立金についての関心や理解が深まるとともに、適正な修繕積立金の設定・積立が促進され、適時適切な修繕工事を通じた良質なマンションストックの形成に寄与することを期待しています。」としています。
修繕積立金について(同ガイドライン抜粋)
将来予想される修繕工事に要する費用を、長期間にわたり計画的に積み立てていくのが、「修繕積立金」です。このように、修繕積立金は、マンションを長期間にわたり、良好な状態に維持していくために必要なものです。
なお、修繕積立金は、共用部分について管理組合が行う修繕工事の費用に充当するための積立金であり、専有部分について各区分所有者が行うリフォームの費用は原則として含まれません。
と説明しています。
長期修繕計画について(同ガイドライン抜粋)
修繕積立金の額は、将来見込まれる修繕工事の内容、おおよその時期、概算の費用等を盛り込んだ「長期修繕計画」に基づいて設定されます。
一般に長期修繕計画は、修繕積立金とともに分譲会社から提示されますが、長期修繕計画の作成方法やそこに盛り込むべき内容については、国土交通省が作成・公表した「長期修繕計画標準様式、長期修繕計画作成ガイドライン及び同コメント」(以下「長期修繕計画作成ガイドライン」といいます。
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk5_000052.html)
において説明されていますので、長期修繕計画についてより理解を深めたい場合には、そちらも適宜参考にしてください。
との記載があります。
ガイドライン改訂から見える修繕積立金額の10年間の変化
2011年初版時の修繕積立金の額の目安は、15建て未満かつ延べ床面積5000㎡未満の建物(おおよそ専有面積70㎡の住戸が50戸未満のマンションにあたる)で平均値は218円/㎡・月とあり、この平均値で計算した70㎡の住戸の1ヶ月あたりの修繕積立金額は15,260円でした。
2021年の改訂では、20階建て未満かつ延べ床面積5000㎡未満の建物の平均値は335円/㎡・月に増え、70㎡の住戸の1カ月当たりの修繕積立金額は23,450に上昇し、この10年間で修繕積立金の平均額は1.5倍に増大していることがわかります。
新築マンションの修繕積立金の当初設定額の平均値は、95.4円/㎡・月 であると2011年の調査結果に書いてあります。専有面積70㎡の住戸の場合、入居当初は6,678円の負担ですむ修繕積立金は、10年過ぎると23,450円の3.5倍にも負担が増えることを示唆しています。
ガイドラインの中に記載されている情報ではありますが、目立たないところに参考として書いてあるのですが、分譲新築マンションの当初の修繕積立金額は、低く設定されていることを裏付ける重要な情報だと思うのは私だけでしょうか。
修繕積立金だけでは足りないのでは?
さらに同ガイドラインには、修繕工事の実施時に、修繕積立金のみでは足りず、一時金の徴収や金融機関からの借り入れを行ったマンションの割合は約21% との記載もあります。(2008年度マンション総合調査(国土交通省))
これからの大規模修繕工事で大事なことは・・・
修繕工事の工事費は資材・材料の高騰に加え、建設労働者・職人の減少や不足によって、人件費が年を追うごとに高くなりつつあります。先の国交省ガイドラインで見た最近10年間で修繕積立金額が1.5倍になったのも、このようなことが原因の一つと考えられます。
今後の建設関連工事費の動向を考えた場合、工事費が下がる要素が見当たらないことから、大規模修繕工事費は今よりさらに高騰することが予測されます。
工事費が高騰すれば修繕積立金不足や修繕積立金の値上げへと発展することは間違いないことでしょう。
このような状況においては、適正で安価な工事費でありながら確実な施工を行ってくれる建設会社、設計コンサルタント会社の選定が、より重要になってくるのではないでしょうか。
管理会社から提出される資料や見積書を信頼するだけでなく、第三者へ調査見積を依頼し、また公的機関の資料や統計と比較検証することで、適正な大規模修繕工事が実施されることを切に願っております。