大規模修繕工事 非破壊検査って何ですか?必要な検査でしょうか?
A:目視調査や打診調査のみでは、
鉄筋コンクリート躯体の劣化、外壁タイルの接着力低下の判断が難しいときに行う調査です。
建物が相当高いあるいは規模が大きい建物、
工事見積依頼前に工事内容をしっかりと確定したい、
人通りの多い道路に面しているなど、
建物の劣化状況を、
客観的に科学的に把握したいときにも行います。
非破壊検査の調査内容は、
鉄筋コンクリート躯体の強度に関するものと、
外壁タイルの剥落危険度に関するものになります。
1.鉄筋コンクリート躯体の調査
鉄筋コンクリートは、圧縮力を負担するコンクリートと、
引張力を負担する鉄筋について調査を行います。
(1)コンクリートの強度に関する調査
①強度試験
コンクリートの強度を測定する方法は、
反発力測定とコア採取による圧縮試験の2つに大別できます。
a)反発力試験
試験機(シュミットハンマー、テストハンマー)を
コンクリート表面に押し当て打撃を与え、
その反発力に諸条件の補正を加え、
コンクリートの強度を推測する方法です。
建物に損傷を与えない簡便な計測方法ですので、
正確な強度とは言えない精度の低い測定方法です。
b)コア採取+圧縮強度試験
コアの太さには2種類あり、
φ100の通常サイズと、
φ25mmソフトコアがあります。
圧縮機械で実際にコアの圧縮破壊を行い、
破壊したときの圧縮強度を計測します。
最初は、ソフトコアによる試験が一般的です。
試験結果に違和感がある、
異常数値が計測された場合は、
通常コア(φ100)にて再検査を行います。
②アルカリシリカ反応試験
骨材(砕石や砂)中のシリカ成分がセメントのアルカリ成分と化学反応し、
アルカリシリカという水分を吸収しやすい成分に変化します。
水分を吸収したアルカリシリカゲルは膨張して、
コンクリート表面にひび割れを発生させ剥落にまで至ります。
アルカリシリカ反応試験は、
コンクリートが持つアルカリシリカ化する潜在力を測定する試験です。
採取したコンクリート片のアルカリシリカ反応を促進させ、
アルカリシリカ反応によるコンクリートの剥落の危険度を推測します。
➂中性化試験(鉄筋の錆に関連)
強度試験で使ったソフトコアを使用して測定可能です。
コンクリートのアルカリ成分が、
コンクリート表面からどこまで失われたかを測定します。
④塩化物イオン量測定(鉄筋の錆に関連)
コンクリートの塩化物イオン量を測定して、
鉄筋が錆び易い環境にないかを調査します。
➄配筋調査
配筋図は設計図面にありますが、
設計図面通りに施工されているかを、
超音波又は電磁波の機械を使用して調査します。
⑥鉄筋腐食度調査
鉄筋が現れる位置までコンクリートを斫り(狭い範囲の一部分を壊す)、
鉄筋の腐食度を見る調査です。
塩化物イオン濃度や中性化が深くまで進行している、
茶色い水染みが多い(茶色は鉄筋錆の色)など、
鉄筋の腐食が懸念される場合に行います。
2.タイルの接着力に関する試験
打診調査や赤外線サーモグラフィによって、
タイルの浮きを見つけることは可能です。
しかし、タイルの接着力の低下に関しては、
判断することが出来ません。
打診調査や赤外線調査では劣化が見られなくても、
付着力が低下したタイルは、
大規模修繕実施の数年後に、
タイルが浮いてっくることもあり得ます。
規模が大きいあるいは外部足場設置の負担が大きい建物、
タイル落下による第三者への危害が懸念される場所にある建物、
などの場合は、タイルの接着強度試験の実施が望ましいです。
①タイル引張接着強度試験
専用機械を使ってタイル面に引張力を加え、
タイルの引張力に対する接着力を測定する試験です。
タイル剥落が起きるのは、
タイルとコンクリート躯体、タイルと張付けモルタル、
との挙動ずれが原因です。
本来であれば、接着力のせん断強度を測定すべきところですが、
せん断力測定は不可能であるため、引張力強度から評価を行います。