コンクリート躯体の誘発目地
誘発目地とは・・
コンクリートのひび割れを意図的に発生させるための目地です。
現代の進化した施工技術と材料を用いてでさえも、
コンクリートにひび割れを発生させないは難しいため、
構造上、意匠上、支障のない場所に設置しひび割れを集中させます。
誘発目地に関する指針
誘発目地に関する技術的指針は建築学会が発刊している
「鉄筋コンクリート造建築物の収縮ひび割れ制御設計・施工指針・同解説」
によるところが大です。
コンクリートひび割れはなぜ起こる
コンクリートのひび割れは、
・乾燥(間隙水分蒸発)
・温度低下
を原因としたコンクリート自体の収縮現象で発生します。
膨張材および収縮低減剤が進化し、
ひび割れの発生は以前よりも抑制されてはいますが、
完全に発生しなくなるまでには至っていません。
ひび割れの全てが悪い訳ではありません
コンクリート工学会は、
全てのひび割れがコンクリート構造物に悪影響を及ぼすものではないとし、
ひび割れ幅が0.2mm以下であれば、
コンクリートの性能は20年間は低下しないとしています。
ひび割れ幅0.2mmを超えると表面被覆の補修が適切で、
ひび割れ幅0.2mm~1.0mmでは樹脂注入工法を、
ひび割れ幅1.0mm以上は充填工法による補修が適切としています。
0.2mm以下のひび割れに関しては、
ひび割れ幅を定期的に測定し拡がっていなことを観察することが必要です。
「鉄筋コンクリート造建築物の収縮ひび割れ制御設計・施工指針・同解説」
建築学会は、同書の中で誘発目地に関して技術的な指針も示しています。
・設計において収縮ひび割れ幅および収縮ひび割れ本数を考慮
・目地を明示的に考慮し,目地以外の部分に収縮ひび割れが入らない設計目標
・「乾燥収縮ひずみ」と「乾燥収縮率」の使い分けを明確化
は第2版で追加された考え方です。
誘発目地の設置間隔
一般的なコンクリート壁の鉄筋比は0.4%程度(注1)ですので、
コンクリート壁の誘発目地間隔は3m程度としています。
鉄筋比が0.8%程度に大きくなると、
ひび割れ幅は小さくなりますが、ひび割れ間隔は1/2となるため、
目地間隔は1.5m程度にする必要があるとしています。
注1:「鉄筋コンクリート造建築物の収縮ひび割れ制御設計・施工指針・同解説」 では、外壁の鉄筋比0.4%以上、内壁の鉄筋比0.3%以上と記載があります。
壁厚さ150mm D10@200ダブル配筋で鉄筋比0.47%、壁厚さ180mm D10@200ダブル配筋で鉄筋比0.39%なので、一般的なコンクリート壁(鉄筋比0.4%)の場合、目地間隔 3m程度は適切な間隔となります。
誘発目地の深さ=コンクリート欠損率
誘発目地の深さ(欠損率)は、実壁厚さに対し1/5以上とし、
かつ誘発目地の間隔は3m以下とあります。
欠損率は、
欠損率=目地深さの総和/全壁厚
この欠損率を20%以上確保することが重要です。
誘発目地の目的は、コンクリート断面を欠損させ、強度が低下した部分を作り、そこにひび割れを誘発させることです。
十分深い目地を設ければ、目地以外の部分との強度差が大きくなり、
目地にひび割れを集中させやすくなります。