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シーリング目地の種類と施工留意点 シーリング「打替え」と「増し打ち」のプロ目線による施工留意点

コラム

1.シーリング目地の種類 ワーキングジョイントとノンワーキングジョイント

(1)ワーキングジョイント

目地に加わる力が強く動きが大きくなる目地がワーキングジョイントです。
金属素材、窯業素材、樹脂素材などは温度・湿度等の影響によって大きく伸縮します。
窓に使用するアルミ建具、ビルの外装金属パネルなどは伸縮度の大きな建材ですので、
それらに関連する目地はワーキングジョイントとなります。

ワーキングジョイントに採用するシーリング材の選定を間違うと、
目地付近の建材が破壊されたり外壁材が剥離落下し人的危害を加えるなどの危険性が高まります。
シーリング材の性質性能を熟知した専門家による選定が重要となります。

(2)ノンワーキングジョイント

動きの小さい目地のことです。
温度や湿度の変化による影響をあまり受けず、
ほとんど動かない、もしくは動きの小さい部材で構成された目地です。
石材、タイル、コンクリートなどの目地が該当します。

2.両者の施工上の留意点

ワーキングジョイントとノンワーキングジョイントでは、
施工の際に重要な注意点として接着面数の違いがあります。

目地は両側面と底面の三面で構成されていて、
・二面接着は両側面
・三面接着は両側面と底面
のそれぞれの面でシーリング材が基材と接着している状態のことを指します。

ワーキングジョイント=二面接着

部材の膨張収縮などで目地の幅が伸縮する目地=動きのある目地は
ワーキングジョイントですので二面接着とすることが必須です。

底面に接着したシーリング材はその幅で固定されることになり、
伸縮する部材に応じてシーリング材の自由な動きを拘束します。
底面に拘束されたシーリング材は破断、はく離、ひび割れを容易に引き起します。

ノンワーキングジョイント=三面接着

動きの小さい目地=ノンワーキングジョイントは、
底面に拘束されても弾性があり伸縮性の高いシーリング材であれば問題はありません。
三面接着による基材との接着性が高くなりますので、剥がれや破れの懸念は無くなります。

 

3.モジュラスとは?

目地の動きに追従する性質を表す専門用語をモジュラスといいます。
シーリング材が引張られた時に元に戻ろうとする力の度合です。

同じゴム製品を使って簡単に説明すると、

・輪ゴム:簡単に伸びるのでモジュラスの低い材料=低モジュラス(LM)

・消しゴム:伸び難いのでモジュラスの高い材料=高モジュラス(HM)

となります。

シーリング材のモジュラスは数値で決められています。
シーリング材が50%引張られた時の戻ろうとする力の度合を測定して,

・0.2N/ ㎟未満が低モジュラス(LM)
・0.2 以上0.4 未満が中モジュラス(MM)
・0.4以上が高モジュラス(HM)

と区分されます。

住宅の外壁材として最も多く使われてる窯業系サイディングの目地には、
低モジュラスタイプを選定することが重要です。

 

4.耐久性区分とは?

モジュラス区分とは別に耐久性区分というものがあります。
耐久性区分は金属パネル間目地に適用するシーリング材の区分を行うことを目的としています。

大まかに以下手順で試験が行われ耐久性能が区分されます。
同じ率で圧縮・引張りが発生する目地を想定した試験方法となっています。

 

初期目地幅は12 ㎜

1.50±1 ℃の温水に24 時間
2.圧縮したまま加熱168 時間
3.引張ったまま冷却24時間

このサイクルを2回行います。

次に23±2℃で同じ圧縮と引張りの試験を2000 回(5±1回/ 分)繰り返して異常がなければ合格です。

 

5.シーリング材の目地幅と目地深さの関係は重要

 

(1)日本建築学会建築工事標準仕様書 JASS 8防水工事

 

日本建築学会建築工事標準仕様書には、
シーリング材の目地幅と目地深さの関係を次のように示しています。

設計目地幅の許容範囲(ガラス回りを除く)は,
最大40 ㎜最小10 ㎜(アクリル系は最大20 ㎜最小10 ㎜)とし、

目地深さについては,

・目地幅10 ㎜で目地深さ10 ㎜
・目地幅20㎜で目地深さ10 ~ 15 ㎜
・目地幅30 ㎜で目地深さ12.5 ~ 17.5 ㎜
・目地幅40 ㎜で目地深さ15 ~ 20 ㎜

が許容範囲としています。

 

(2)日本シーリング材工業会の見解は・・・

実際の建物の窯業系サイディング目地は、
日本建築学会建築工事標準仕様書通りの目地形状が常に確保されることは困難です。
様々な事情により許容未満の目地形状となってしまう場合もあります。
日本シーリング材工業会では,幅10 ㎜で深さ8㎜以上を標準とするとの見解を示しています

 

窓枠回り目地の施工は難しい

窓枠回りの目地は撤去が難しい箇所であるため、
撤去した場合、かえって漏水の原因を誘発することにもなりかねません。

旧シーリングを撤去しない増し打ちを選択することを良しとするケースもあります。
そのような場合、旧シーリングのゴム弾性が健全と判断される状態でも、
シーリング材の厚みを出来るだけ確保する「三角シール」という方法が最適です。
見た目は少しごつくなりますが、雨漏りやシーリング本来の機能を優先した最善の方法です。

 

 

窓枠廻りに多い「増し打ち」施工の留意点

 

旧シーリングの撤去が難しい窓枠廻りのシーリングは、
上で紹介した三角シールによる増し打ちが望ましいのですが、
意匠上、三角シールを好まない方もいらっしゃいます。

その場合は増し打ちという施工方法を採りますが、いくつかの注意点があります。

通常、特別な指示が無いと、職人たちは注意して作業を行うことはありません。
手間が掛かるため工事費が上がりますが、長い目で見るとわずかな出費だと言えます。

(1)薄層未硬化現象

特に2成分形のシーリング材に見られます。
本来硬化するべきシーリング材が薄層なため、
硬化剤が空気中の水分の影響を受けて不活性になり易く、
硬化が不充分になったり、固まらなくなる現象です。

(2)接着性低下によるはく離現象(薄層剥離)

薄層のシーリング材は伸縮の影響が大きく、
接着性を維持することが難しくなりますので、
めくれるようにはく離が起こる現象です。

(3)可塑剤移行によるブリード汚染現象

旧シーリング材がノンブリードタイプでない場合、
旧シーリング材に配合されている可塑剤が「増し打ち」された新シーリング材に移行・透過し、
新しい塗装塗膜にブリード汚染現象が発生することが多くあります。

(4)旧シーリング材亀裂による膨れ現象

旧シーリング材は経年により表面にクラックやひび割れが発生していることが多く、
その上にシーリング材を「増し打ち」すると、
クラックやひび割れ内部の空気や水分が膨張することで、
膨れ現象が発生します。

上塗り塗装を施す場合は、旧シーリング材の可塑剤移行による塗膜ブリード汚染への対策として、
施工したシーリング材の上に塗料メーカーのブリード抑制塗料(バリアプライマー)を塗布してから、
仕上塗装を行うとこの現象を抑制することができます。

上で解説した(1)~(4)の現象を抑制するには、
熟練の建築士や現場管理者などからの注意指示と適切な監理が重要だと考えます。

 

窓枠廻りのシーリング「打ち替え」

既に目地のはく離やシーリング材の断裂が見られる場合は、
旧シーリングを撤去して打替えが最善です。
この場合、窓枠を傷付けないよう慎重な作業が求められます。
目地きわのシーリング残りカスまで奇麗に丁寧に除去さえ出来れば、
あとは前述の目地シーリング施工の手順や注意点に留意して作業を行います。

 

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コラム執筆者:一級建築士 佐藤

 

 

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