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国が目指すマンション管理組合の自主自立 管理会社との関係 

コラム

マンション老朽化の現状

全国のマンションのストック数は約655万戸(2018年3月現在)です。
そしてマンション居住者は生活に便利な都市部が中心で、約1,500万人超がマンション暮らしです。
マンションは地価の高い都市部において、なくてはならない居住形態として定着しています。

全マンションの中で築40年超のマンションは現在81万戸です。
そして10年後には198万戸、20年後には367万戸となると見込みが公表されています。(2018年3月時点)
一方、古いマンションの建替えは累計244件、約19,200戸(2019年4月現在)に留まっています。

老朽化したマンションは災害時、周辺への被害も含め大きくなる危険性を含んでいます。
また、平時でも管理が行き届かなければ周辺環境に悪い影響を及ぼす原因にもなります。

国やマンションを多く抱える都市部の自治体は、
維持管理の重要性を説き維持管理の適正化を推進する施策を実施し、
また建替えを円滑に進められるような法改正などの対策を始めています。

 

マンションの特殊性

マンションは多数の区分所有者が一団の建物を共同利用しています。
マンションの特殊性は以下に記載した通りですが、
これらの問題を解決するには単なる管理組合だけ対処対応することは困難です。

維持管理や再生(建替えや売却)に関する意見を纏めることが難しい現状を打開するため、
法整備や公的機関が関与する必要性について様々なところで議論されています。

 

1.維持管理等に係る意思決定に、意識・価値観・経済力等が異なる区分所有者間の合意形成が必要
2.区分所有者の多くは、建物の維持管理等に必要な専門的知識や経験を必ずしも有していない
3.適切に維持管理されない場合、戸建て住宅に比べ、その規模ゆえに、周辺の住環境に与える影響が大きい

マンション管理計画認定制度

「マンション管理計画認定制度」は、
2022年4月にマンション管理適正化法の改正にあわせ定められました。
2024年3月時点、この制度で認定を受けた管理組合は約550に達しています。

古いマンションが増える中、建物の長寿命化をどう図るかは、
マンションの老朽化問題を考える上で重要な課題です。

国は、模範的なマンション管理組合を認定することにより、
他のマンション管理組合が模範的管理組合の手法を見習い、
適正な管理を実施してもらうことで、
マンション老朽化問題を解決しようとマンション管理計画認定制度を設けたのです。

 

国(国土交通省)が模範的と考えるマンションとはどういうものでしょうか。
マンション管理適正化法を精読すると、

1.建物や建築設備が適切に維持管理されている
2.管理組合が管理会社から自立している
3.マンション内外に健全なコミュニティが形成されている

ということが読み取れます。

 

国土交通省「マンション管理適正化法の改正概要」

http://chrome-extension://efaidnbmnnnibpcajpcglclefindmkaj/https://www.mlit.go.jp/common/001356471.pdf

 

 

マンション管理組合の自主自立

 

マンション管理組合員(区分所有権者等)の名簿は、管理会社が収集し管理している名簿のため、
個人情報保護法により当該マンションの管理組合に対してさえ開示できないとういう事態が生じています。

当該マンションの区分所有権者たちにより結成された管理組合であるにも拘らず、
全ての業務を管理会社に委託したことによる弊害と言えるでしょう。

主体は管理組合であって管理会社はその補助にあたる機関であることを、
改めて認識すべき時期だと考えます。

マンション管理組合が自主自立することで、
マンション全体の問題点、近隣関係、マンション管理の適正さ、
管理会社の過不足対応、怠慢及び不正なども見えてくることは間違いありません。

 

 

管理会社とは上手に付き合うことが大切

 

管理会社は公的機関でもなくボランティアでもない歴とした営利企業です。
営利企業であるからには利益を追求するのは当然のことです。

管理組合さんと契約した見積金額よりも、さらに安い業者を探索し発注することもあるでしょう。
そのことによって、

・当初合意した工事内容と違った
・工事仕上りや施工品質が期待通りでなかった

などの事態を招く原因の一つになってしまった事例もございます。

管理会社に全てを任せるのではなく、
管理会社はあくまでも意見聴取先、見積依頼先の一社にすぎないことを、
区分所有者全員が共有し、管理会社以外の数社から意見を聴取したり、
工事見積を直接依頼したりして比較検討することが大切です。

 

 

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コラム執筆者:一級建築士 佐藤静

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